「医学部合格を目指す予備校選び」

目次

「医学部合格を目指す予備校選び」
●メルリックス学院
●医学部特訓塾
●東京医進学院
●駿台予備校(市ヶ谷校)
●野田クルゼ
●ウィンダム
●YMS
●メディカルスクールIG
●医進塾
●代々木ゼミナール

「医学部合格後の活躍をイメージする」
●医学部卒業後の進路
●医学部卒業後の進路Q&A
●病理診断が主な仕事の病理医
●予防医療への関心から産業医を目指す
●医療と法律の立場から医療従事者が働きやすい社会を

「医学部合格までの知られざる世界」
●一般入試の個性的な小論文試験

 

「医学部合格を目指す予備校選び」

●メルリックス学院
2014年の合格実績318名と全国トップの合格者を輩出したメルリックス学院は、東京と福岡に拠点を置く私立医学部・私立歯学部受験専門予備校で、誰でも入学できること、入学時の学力は問わないことが魅力となっています。
それが可能なのは、私立医学部・私立歯学部受験に特化したカリキュラムシステムを導入しており、志望校合格のために効率的な勉強ができる環境があるからです。
少人数制クラス編成で生徒第一主義をモットーに掲げ、生徒1人1人の能力に合った最適な指導を行っています。

最新入試情報と学力に応じたオリジナル教材、集中できる学習環境と充実した講師陣を持つメルリックスでは、毎年、「私立医歯学部受験攻略ガイド」を15年間発行しています。
私立医学部全29校、私立歯学部全17校の大学の受験情報を様々な角度から徹底的に分析した本で、各大学の入試日程、過去5年間の出題傾向と対策、学納金や特待生情報など充実した情報が満載です。
私立医学部志望であれば、豊富な合格実績と合格に必要なノウハウを持つメルリックス学院は強力なパートナーになってくれると思います。

●医学部特訓塾
1浪の生徒も2浪の生徒も共に学ぶ学生が、皆仲良く切磋琢磨している医学部特訓塾では、医学部は一部の天才や秀才が行くものという従来の考えを覆し、すべての生徒に親身になって寄り添い、指導することをモットーとしています。
年々厳しさを増す医学部の受験競争で、一部大手予備校などで殺伐とした雰囲気があったりしますが、医学部特訓塾では生徒同士の結びつきを大事にし、クラスの結束力こそ合格力になるという考えを持っており、仲間とともに合格できるよう、絆を深められるクラス運営、カリキュラムが特徴です。

医学部特訓塾の本田代表は心が優しい人こそ、患者さんの立場で治療ができるので、心優しい生徒の医学部合格をサポートしたいという信念があり、予備校の宣伝のために実績づくりより、優しいがゆえに弱さを持つ生徒への指導を大切にしています。
そのため、生徒の保護者とのコミュニケーションを重視しており、面談や定期的な成績報告など、学習状況を伝えることで、家族のストレスを軽減し、家族の受験生活のサポートを支えています。

●東京医進学院
東京医進学院は1人1人の生徒の得意科目、苦手科目に合わせたカリキュラムが作れる体制が整っています。
まず、「通常講義」で全科目の講義をし、「講習」で実践的な問題にチャレンジし、「合宿」をして学力に自信がつくまで徹底的に勉強量をこなします。
さらに「個別指導」で苦手科目を克服するようにして、「模擬試験」で点数が取れるような実力を身につけて行きます。

この「通常講義」「講習」「合宿」「個別指導」「模擬試験」の5つのカリキュラムを繰り返すことで、医学部合格に導き、自由度の高い授業選択は大手予備校にはできない魅力があります。
1クラス15人制の少人数講義で1人1人の生徒を把握し、1週間の授業は2040分のみっちり指導、個別指導の他、夜間の少人数レッスンなどカスタマイズできます。
授業のレベルも科目ごとに選択可能で、生徒の得意・不得意科目により、「基本」「標準」「発展」の3つのレベルを選べます。
講師のアドバイスで自分に合った授業環境を組み立てることで、効率の良い学習をすることもできます。

●駿台予備校(市ヶ谷校)
大手予備校として一般入試で多くの実績を出している駿台予備校は、医学部指導塾としても30年の伝統があり、市ヶ谷校は「医学への登竜門」と呼ばれるほどの名門校舎です。
大手予備校ならではのサポート体制が魅力で、欠席時のビデオでの補習、自習室や学習環境が整っていますので、あとは生徒自身がその恵まれた環境の活かし方が大事になって来ます。
マンモス予備校というイメージが強い駿台予備校ですが、医学部コースは別枠で、医学部進学のためのきめ細かい指導が、30年の積み重ねによって確立されています。

伝統ある医学部専門校舎には、全国から医学部を目指す受験生が集まり、そのため「医学への登竜門」と呼ばれることがあります。
長年の受験指導の実績が豊富な駿台予備校では、情報量が桁違いに多く、合格者の体験記など門外不出の「サクセスレポート」なるものが存在します。
医学部入試情報については不透明な部分があり、情報量の差による入試の有利不利が出てしまう傾向がありますので、情報力がある実績ある予備校を選ぶのも重要なポイントです。

●野田クルゼ
難関試験の医学部受験は効率の良い学習が求められ、勉強時間をやみくもに増やせば良いというものではありません。
野田クルゼでは経験豊かな講師が多く、1人1人の生徒の現状を理解し、何が必要で何が必要でないか、生徒の成績を伸ばすためのカリキュラムを無駄のない形にマネジメントしてくれます。
特にスケジュール管理が徹底しており、通常の授業の他、季節ごとに必要な学習内容の講座を用意し、生徒が“今やるべきこと”だけを行い、医学部合格への最短のコースをアシストします。

無駄のない最適な学習方法を指導してもらえますので、生徒は講師を信頼し、不安を抱くことなく勉強に集中することができます。
野田クルゼの卒業生には「言われたことをやっただけで医学部に合格した」と話す人もいます。

野田クルゼの講師陣は東京大学医学部を始め、超難関大学出身のエリート中心で、しかも指導経験が多い優秀な講師が多いです。
また、個別授業に力を入れ、生徒は自分が希望する講師を指名して、理解ある講師と一緒に不得意科目克服を行うことができます。

●ウィンダム
ウィンダムではきめ細かい指導を目指し、生徒1人1人の個性に合わせた必要な対策を考え、医学部合格という目標を達成するための方法論やシステムを提案し、生徒の合格力を高めます。
合格に必要なことを効率良く行うことができるかどうかが、医学部合格への分かれ道であり、医学部受験に必要な講師はカリスマ講師ではなく、生徒のことを理解し、必要なことをアドバイスできる講師です。

ウィンダムでは年間8回行うマンスリーテストを目標に、カリキュラムが組まれ、他にもレビューテストや夏季冬季講習、医大別直前ゼミなどで学力アップを図ります。
そのため、参考書や問題集を自分で揃えて受験対策を立てる必要がなく、必要な勉強のみに集中できる環境があり、「講師に言われたことをやっただけで合格した」と卒業生が語るほど、生徒に信頼されています。

●YMS
教育理念に「医のアート」を掲げている医学部予備校のYMSは、生徒を指導するにあたっての考え方を明確にしています。
医学部受験を単に知識を詰め込むための受験競争と捉えるような指導はしていません。
治療における技能はもちろん、患者と向き合う姿勢など、医療があるべき姿を示すのが指導理念です。

医学部合格はひとつの通過点に過ぎず、医療の現場でのしっかりした理念を指導するYMSの理念は貴重です。
勉強だけでなく、ボランティア活動も推奨しており、常に医師になるために大事なことを同時に学びながら、医学部受験に必要な知識を学習して行きます。

建築家によって設計された代々木にあるYMSの校舎はモダンな建物で、洗練された空間の中で、医療について、自分はどんな医師になりたいのか考えされてくれる場所です。
YMSは医学部受験指導30年で培ったノウハウで生徒をサポートし、医学部合格後もそのフォローシステムは続きます。

●メディカルスクールIG
医学部専門予備校として毎年多くの医学部合格者を輩出しているメディカルスクールIGは、1つのクラスで10人ほどの少人数制であることが特徴です。
講師と生徒の距離が近く、質問をしやすい環境にあります。
教科別に自分のレベルに応じた講義が受けられるシステムで、授業で使用されるテキストは医学部受験の専門講師陣が作成した、オリジナルテキストです。

通常の授業を受講しても学力がアップしない教科は、その教科に精通した講師の個人指導により、弱点の克服が可能になります。
年間カリキュラムは前期と後期に分かれ、前期は基礎を中心に、後期は入試に対応した講義が行われます。

年間4回のオリジナル模試、夏季・冬季の合宿もあり、万全の入試対策の体制が取られています。
医学部受験で必要となる小論文の授業は、題目方式、課題方式、ビジュアル方式など、出題パターンを繰り返す実践で表現力を養います。

●医進塾
医学部受験の専門予備校で少人数制の授業が多いのは、その方が学習効率が間違いなく高まるからですが、中でも医進塾では更に少人数生で、1クラス6~8人で運営されています。
10人の生徒に対し、20人の講師でサポートすると言われるくらい、1人の生徒への指導を手厚くしているのが特徴です。

カリキュラムは基礎固めから始まり、後期は実戦形式の演習が多くなりますが、個別にアドバイザーがつきますので、生徒の進捗状況に合わせて、都度学習内容を変えて行くことも可能です。
しかも、学校法人の医進塾は同じグループに早稲田塾があり、法人経営のため、営利目的での価格設定ではなく、比較的リーズナブルな授業料で講義を受けることができます。

●代々木ゼミナール
駿台、河合と並び3大予備校と称される大手予備校代表格の代々木ゼミナールは、大手のメリットを最大限に活かせます。
整った学習設備、全国にある校舎はアクセス良好で、講師の指導力には定評があり、「講師の代ゼミ」と呼ばれるほど、人気講師が集まっていることで有名になった予備校です。
90年代から人気講師が多く在籍していることで注目を集めた代々木ゼミナールは、授業を組み合わせる自由度の高いカリキュラムで、自分の好きな講師の授業を受けることができるのが魅力です。

規模が大きい予備校だからこそ、欠席した授業の振替などフォローアップ体制は万全である一方、クラス編成は少人数制となっています。
大手予備校のデメリットとしてよく言われる、生徒に目が行き届かない、一方的なマンモス授業という状況を回避することができます。

また、医学部受験の現役合格に対応した「Y-SAPIX」という学習塾を用意し、少人数対話型のクラス編成を取っています。
講師とのやり取りの時間を増やし、生徒の理解力を高めることに力を入れることで、少人数ながら国公立医学部医学科、私立大学医学部にそれぞれ22名の合格実績があります。

「医学部合格後の活躍をイメージする」

●医学部卒業後の進路
医学部を卒業すると医師国家試験に合格した後、研修医として各病院で初期臨床研修を受け、原則2年間の研修生活の間に医療現場の実際を体験します。
その後、さらに専門を極める専門研修(後期研修)に進むのが大半の進路で、研修を終えると勤務医として働くコースを始め、大学院進学、行政、開業医など多彩な進路を選ぶことができます。
まず、初期臨床研修が終了すると、医学系医学科のある大学院で博士課程を修習する人、大学の附属病院や厚生労働省認定の臨床研修指定病院で、専門研修と呼ばれる後期研修を受ける人、官公庁で医療行政に携わる道を選ぶ人に分かれます。

大学院進学や専門研修終了後は、留学する人は除き、大学病院の医局に入局するか、一般病院に就職するか、または開業医として独立する道もあり、医師としてはここから実際にキャリアをスタートさせることになります。
まれに医学部卒業後、一般企業に就職する人もいますが、多くは医療関係の分野を選んでいます。
医療業界から派生する市場は大きく、医療用品や人材派遣など選択肢は無数にあります。

●医学部卒業後の進路Q&A
・初期臨床研修とは?
平成16年から始まった制度で、研修医が幅広い診療科をローテーションすることで、医療についての意識や経験を豊かにすることを目的にしています。
内科・救急医療・地域医療は必修で、外科・小児科・産婦人科・精神科・麻酔科から選択必修2科目を研修医が自由に選択することができます。
大学附属病院の中には、医学部卒業後の研修医が臨床研修を行うための専門センターを併設しているところもあります。

・地方大学医学部卒で都会の勤務医になれる?
都会の大きな病院ほど学閥があることが多く、地方大学医学部卒で都会の大病院に就職するのはなかなか難しいようです。
しかし、出身の地方大学に在籍している教授の紹介により、希望する条件の病院をスムーズに見つけられる可能性もあります。

・地域枠の奨学金で医学部に進学するデメリットは?
地域枠を利用して医学部に進学した場合、卒業後約9年間は地方やへき地医療に従事することになります。
もちろん、医者としてやりがいはあると思いますが、9年間の研修後に都会の大病院に就職して、最先端のスキルを学ぶということは難しくなるでしょう。
また、特にへき地医療では、患者との密接なコミュニケーションが求められますので、医療技術より広い意味での人間力を問われることになります。

・開業医は経営の勉強も必要?
医師であると同時に病院のオーナーという、経営的なセンスも求められる開業医を目指す場合、大病院の経営者になるため、医学部卒業後に大学の経営学部で勉強し直すケース、海外の医学部留学の際に、MBA資格も同時に目指すというケースなどがありますが、経済的負担がかかります。
個人で開業医を目指すのであれば、規模の小さい病院で勤務医として経験を積んだ後、経営のことも勉強しながら独立を目指すというのが一般的で、着実なアプローチ法と言えます。

・美容外科業界の現状は?
自分の体形や容姿に関する美意識が高まるにつれ、美容外科の存在はますます重要になって来ています。
痩身や美容整形などのメニューを利用する人は増加中ですが、同時に美容外科クリニックの数も多くなり、競争が激化しているのが現状です。
美容外科の老舗クリニックでは若手医師を確保し、美容外科の開業医を増やさないためにも、勤務医として雇って利益を上げようとするところもあります。

美容外科医が一般の外科医と異なるのは、サービス業の側面が大きいことで、患者さんの美に対する悩みを丁寧にカウンセリングする力、患者さんが望む姿、形を作るにはセンスと繊細さが必要です。
人気があるから需要もありそうと安易なイメージで、美容外科を選択するのは控えた方が賢明です。

●病理診断が主な仕事の病理医
福井大学医学部卒業後、病理専門医、細胞診専門医の病理医として、福井赤十字病院に勤務している男性医師の話から紹介します。
病理医は患者さんから採取した組織や細胞を、肉眼や顕微鏡で確認して「病理診断」するのが主な仕事で、手術中に採取した検体を15分ほどで標本にし、切除範囲を決定する際に必要になる術中迅速診断も含まれます。
他に亡くなられた患者さんのご遺体を解剖し、病変の広がりや治療効果などを調べる病理解剖もあります。

患者さんと直接関わることが少ない病理医は、一般の臨床医と違い、希望する医者が少なく、数が不足している現状があります。
全国に専門医資格のある病理専門医は約2000名ほどですが、中でも福井県は9名ともっとも少ない地域になっています。
農学研究者の父の影響で、小さいときから生物学や化学に関心があり、大学は農学部や薬学部に進みたいと考えていましたが、福井大学医学部に縁あって入学しました。

3年生のときに初めて病理学に出会い、すべての臓器やあらゆる疾患を対象とする分野の中で、実際に細胞や組織を観察して病気を診断する診断病理学があることを知り、人とは違う仕事をしたいと思っていた自分は、病理医の仕事に興味を持ちました。
医師国家試験合格後、福井大学医学部附属病院での初期臨床研修2年間のうち、5ヶ月間を病理部で研修し、毎日遅くまで指導医とともに標本に向き合いながら、病理医の基本姿勢を学びました。
病理診断はその後の患者さんの治療方針を左右する大事な仕事で、常に新しい知識を吸収する姿勢と、正しい知識に基づいた判断力、決断力を必要とされます。

現在の職場で、病理医の常勤が私1人のため、ときに診断が困難になることがありますが、福井大学から応援に来て頂いたり、大学の合同症例検討会に参加させて頂いたりして、大学の支援体制に助けられています。
医学部生に伝えたいことは、大学時代はやる気があれば、自由にやりたいことができる時期なので、自分の世界を広げるために、どんな分野でも興味があれば首を突っ込んでみることをお勧めします。
これまで知らなかった世界があることに気づき、自分が医師になってやりたいことを見つけられるかも知れません。

●予防医療への関心から産業医を目指す
産業医科大学卒業後、予防医療の専門家である産業医を選択した男性医師の話から紹介します。
医師を志すきっかけとなったのは、高校1年生のときに末期がんで祖父が亡くなった経験で、それから病気の早期発見の重要性を知ることになり、病気の原理への探求心が芽生え、予防医療に興味を持ちました。
企業の従業員の健康管理をするという予防医療の専門家である産業医に関心がありましたし、卒業後、産業医と臨床医の両方を選択できることが魅力でした。

産業医科大学は産業医を育成するための独自のカリキュラムが充実し、特に5年次の「産業医学現場実習」は印象が強いです。
1週間程度企業に出向し、実際に産業医として働く医師の仕事を見学する実習プログラムで、実際の産業医の仕事がどのようなものかを知ることができる貴重な機会でした。
私は精密機械メーカーに出向しましたが、従業員の健康を維持するための面談や、健康指導を行う医師の姿を通して、臨床医と異なり、予防医療に重点を置く産業医の性質を再確認する経験となりました。

産業医科大学医学部生は医師国家試験合格後、産業医や臨床医など進路別に行われる「産業医学卒後修練課程」の研修プログラムに進み、私は産業医と臨床医の研修も受けられるコースを選び、研修終了後いったん泌尿器科の臨床医となりました。
臨床医として5年間経験する中で、改めて病気の早期発見や予防医療の重要性を認識したので、予防医療の専門家である産業医になろうと思いました。
建設・造船関連企業で産業医として5年間在籍し、その経験を元に自分が考える健康管理のあり方を理解してくれる、現在の三菱樹脂の会社と出会いました。

一般的に産業医はひとつの事業所に常駐して勤務しますが、私の場合、本社だけでなく全国の販売拠点や、工場の各々の労働環境調査、従業員面談に加え、健康教育プログラム企画立案と会社の健康管理を統括的に行っています。
職場で力を十分に発揮できるよう健康管理をサポートするのが産業医の仕事で、より専門的な治療が必要なときは、患者さんに外部の医師を紹介したり、会社側の立場から患者さんを診て、まだ十分働ける状態ではないと判断すればストップをかけたりすることもあります。
職場で長期療養を余儀なくされている方をサポートし、職場復帰に近づいている姿を見ていると産業医としてやりがいを感じます。

●医療と法律の立場から医療従事者が働きやすい社会を
整形外科医から弁護士に転身した異色の経歴を持つ男性医師の話から紹介します。
高校時代スキーをしていた経験から、一流のアスリートと関わりたいと医学部卒業後は整形外科医になりましたが、医療過誤や患者との法的トラブルなど、医師の仕事の理不尽さも感じていました。
そんなときにスキーで大きな事故に遭い、視力の後遺症が残ってしまい、整形外科医を継続して行くことに若干支障があることが分かりました。

そのころ多彩な人材を法曹界へという触れ込みで法科大学院制度が始まり、弁護士を目指すことを決意しました。
医師として働きながら、効率的に司法試験合格を目指そうと、在宅受講の有名塾を選択し、思いの外、旧司法試験の択一試験の結果が良かったので、旧司法試験の受験を継続し、弁護士資格を取得できました。
医師としての経験だけでなく、様々な分野の業務を経験しようと取扱い分野が幅広く、それぞれの業務に精通した弁護士がいる現在の事務所に入所しました。

一般民事からM&A、民事再生や交通事故の示談、訴訟案件も扱いますが、医師の経験を活かし、医療過誤や介護事故、医療機器の特許関連事件も手がけます。
医師免許があることで、周囲の理解も得やすくクライアントの信頼感も増すのではないかと思います。
これまでで特に印象に残った医療過誤の案件では、一審敗訴から控訴審を担当しましたが、入念に証拠を集め、客観的事実を検討し、友人の医師に参考意見をもらって主張を組み立て直し、逆転判決を得ました。
かなり労力はかかりましたが、弁護士としてやりがいのある事件でした。

今、実感しているのは医療の世界と弁護士の仕事は共通点が多いということで、依頼者または患者の話を聞き、本人の主張または自覚症状や、証拠または検査結果・診察所見を収集し、現状把握の上、法的解決または健康回復のための、法的アドバイス・法的解決手段または治療や手術を行うという一連のプロセスはまったく同じです。
依頼者のことを第一に同じ目線で考え、言いなりではなく、専門家として指摘すべきところは指摘し、なるべく専門用語を使わずに分かりやすい表現に努め、依頼者が喜んでくれることでやりがいを感じるのは医者と同様です。

医療現場の実情の変化に医療制度に関する法制度が追いついていないと感じ、単なる病院側の代理人として医事紛争を担当するのではなく、医療従事者と法律家の双方の立場を理解した上で、医療と法律の橋渡しをし、医療従事者がより良い環境で働けるようにサポートしたいと思います。

「医学部合格までの知られざる世界」

●一般入試の個性的な小論文試験
2015年度順天堂大学医学部入学試験の小論文の出題で、ある写真が掲載されていました。
ロンドンのターミナルであるキングス・クロス駅構内で、うつむきながら階段を上る長いコートを着た男性の後ろ姿が遠景にあり、少し暗い構内の階段下には色鮮やかな2つの赤い風船が、2本の糸で手すりに結ばれ浮かんでいます。
写真に添えられた問題文には「キングス・クロス駅の写真を見て、あなたの感じるところを800字以内で記述しなさい。」とありました。
このユニークな小論文の出題は、「週刊東洋経済」の特集記事「医学部・医者ウラとオモテ」で最近の医学部入試傾向が紹介され、今年の入学試験の興味深い問題を取り上げ、簡単な解説をした中のひとつでした。

週刊東洋経済の特集記事を読んだ医学部受験生の親御さんからは、実際の写真はどういう描写で、合格するためにはどんな解答をすれば良かったのか詳しく知りたいという要望が届いたそうです。
特集記事を書いた元予備校講師は、確かにちょっと面食らう問題ではありますが、今の医療の世界で求められている医療人の資質が理解できれば、入試問題で出題されるどんな難問も解法が見えてくるもので、要するに出題者がなぜ、この問題を投げかけたのかを推理することができれば、特に頭を抱える必要はないと言います。
この問題もちょっと考えると、800字程度の小論文をすぐまとめるのは難しそうですが、必ずしもそうではなく、まず大前提としてこの問題には数学の解答のように、1つの明確な正解があるわけではないことがあります。

要するに遠景に背中が写るコートを着た男性が、どこに行こうとしているのか、その目的は何なのか、この男性と自分を重ね合わせるとどうなるかなど、色々と思い巡らして考えることが許されます。
ただ1つだけ配慮しなければならない重要なポイントは、本問が医学部の入試問題であるということです。
問題を出題した側は医学部生としてふさわしい人間、医者としてふさわしい人間を選ぶことを目的としていることは、見過ごせない最重要ポイントです。

少なくともこの目的に沿った内容の論文にする必要があります。
将来、医療の現場で働くなら、ポジティブ・ネガティブに分けると、写真の男性をポジティブに捉えることが望ましいでしょう。
医学の道を志す受験生自らの気持ちを男性の行動とダブらせ、学ぶことは階段を1つ1つ上ることですので、関連は見出せると思います。

それだけでは800字は埋まらないので、写真をよく観察し、手すりに結ばれた赤い風船の美しさに気づかずに、階段を上っていく男性の姿にイメージを膨らませることもできます。
つまり、急速に変化する情報化社会の中で、日々の忙しさに追われ、身の回りの小さな変化、1輪の花の美しさにも気づくことなく、心のゆとりやさらには本来人間に備わっている人間性のようなものが、失われているのではないかという視点で書くことができます。
医師に必要とされる観察力、推理力を表現し、社会の変化という大局的視点も充足することができます。